【ブランディングコラム集バックナンバー】
◆コラム:「ブランディング戦略が有効な世代とは?」
考察3・・・若年層について
若者にはブランディング戦略は通用しないのか?若者の場合も考えてみることにしましょう。
若者はシニアに比べてロイヤルティは低いと言われています。それは彼らがまだ人生経験に乏しく正しい選択基準を持っておらず、常に新しい情報を探しながら自分に本当に合ったものを模索している途中段階にあるからと言えるでしょう。金銭的余裕が無いため消費経験が乏しくモノの本当価値を知らないことが多いのです。
そのため多くの若者は、「新しいもの」「見た目がいいもの」など表面的な部分に価値を置く傾向にあります。それは自分が本当にその商品を評価しているからではなく、「最先端の情報を知っている自分を認められたい」「周囲との関係を円滑にするための話題作り・取り残されたくない」「友達に自慢したい」程度の欲求からの行動であることが多いです。(彼らはそれ以上の価値判断基準は持っていません。いや、日常生活においてそれを持つ必要性がまだないのでしょう。)
集団生活を円滑にするためには「みんなと一緒」「マジョリティ」が重要な要素だが、学校という限られた世界から抜け出し「個」として生きていくようになり様々な情報・世界を吟味できるようになることで自分が潜在的に本当に求めているものに気づくことになります。色々なことを知りたい欲求があり水を吸うスポンジのように高い情報処理能力があります。
モノ余りの時代でありなおかつインターネットが普及している現代では若いときから様々な情報を得ることができるようになりました。色々な情報を吟味し様々な経験をこなしていることがあり、ある特定な分野での選択基準のハードルは高いことがあります(○○マニア、○○オタクといわれる人々)。
ただの新し物好き(アーリーアダプター)以外にも、ある分野においてその商品の良さを理解した上で、「それを周囲にも広めることで認められたい」「コミュニティの帰属意識高めたい・コミュニティの中心になりたい」という層(オピニオンリーダー)が多いのも事実です。
彼らの心をつかむことができ彼らの持つコミュニティの間で多大な評価を得ることができれば、そこから一般消費者への広がりも十分に見込むことができるでしょう。シニアにしろ若者にしろオピニオンリーダーをいかにうまく活用するかがブランディング戦略の鍵となることはいうまでもありません。
商品やターゲットによってブランディング戦略の方法も様々だが、基本的な若者に対するブランディング戦略とは、「大人になったら(稼げるようになったら)あれを持ちたい」という「あこがれ」の感情を持たせることを目的にした上で、商品の正しい選択基準を徐々に啓蒙していく形が好まれます。こうした地道な努力を行っていくことで、最初は彼らは色々な商品を試して回るかもしれなませんが、いずれは「本物」を理解し自分たちのもとへ帰ってきてくれるはずです。
昔から企業は若者に向け、単なる「新しいだけ」「見た目がいいだけ」の中身のない「一発屋的商品」を売ろうとする傾向があります。そのような商品は「若者に求められている」かもしれませんが、大人として「彼らにより良い大人に成長してもらう為の商品開発」という観点から地道にブランディングを行ってくれる企業が増えることを、個人的には望んでいます。
(終わりに)
今回、富裕層シニアに対するブランド展開が最も有効であると述べましたが、地方において「シニア」は多くても「富裕層」と呼べる人たちの割合は少ないのが現実です。今一般的に言われる「富裕層戦略」のターゲットはあくまで東京圏在住の人々に対するものであり、田舎の地元商売においては(そのままでは)富裕層戦略は展開しにくいものなのです。
これを聞いて田舎の地元商売には「ブランディング戦略」も必要ないのではないかと思われる方がいるかもしませんが、決してそんなことはありません。富裕層戦略は「お金を持っている人たちにどのように売るか」というある意味で浅はかな視点から生み出されたものであるのに対し、ブランディング戦略はさらに自社の商売を根本から見つめなおして魅力を引き出す作業を行うものです。
自社の自社商品の付加価値を最大限に高めることで結果としてお客から長期的な支持を得ることを可能にするブランディング戦略は、あなたの会社が誰をターゲットとしていようが、どのような商品を扱っていようが重要であることは言うまでもないでしょう。
連日、景気回復の報道が行われていますが、一方では所得格差や地域格差がどんどん進んでいるのが事実です。地方の企業にとっては決して有利な状況とは言えない時代が続いているが、悲観的になる必要は決してありません。現状をしっかりと把握した上で「ならどうすればいいのか?」と本気で考えてみると、現状を打破する方法は、案外色々とあることに気づくはずです。
周囲の風潮に流されて一緒になって意気消沈していても何もはじまりません。気づいた人から先に立ち上がるのです。自社がまず元気になって周囲の企業の手本となり周囲に良い影響を与えくことが、一番の地域活性化の貢献になるのではないでしょうか。
今回、あくまで「世代」の観点からブランディングを述べましたが、消費行動をこれだけの視点で把握したつもりになるのも危険なことです。近年はインターネット環境の普及により消費行動は複雑多様化し、このような「世代観」では捉えきれない新しい消費心理が働いている。次回のコラムではこれからの時代を生き抜くために(また、ブランドを構築するためにも)理解しておかなくてはならない消費行動を別の観点から考察した内容について触れておきたいと思います。