【ブランディングコラム集バックナンバー】
◆コラム:「ブランドには3つの種類がある」
1.ブランドその1.パーソナル(個人)ブランド
(1-A) 外部に向けた自身のビジョン・ミッションを提示する
商品の品質が市場で認知も評価もされていないアーリーステージにおいては、売り手の差別化されたビジョンやミッション、キャラクターを打ち出すことが認知や安心感に結び付きやすいものです。(売り手のこだわりが伝わっていればある消費者がその商品を仮に気に入らなかったとしても、「自分には合わなかっただけ。これを売っている人もこの商品も素晴らしいもので、それを本当に必要としている人は私以外にたくさんいるだろう。」という評価が得られます。)
仮に商品は受け入れられなかったとしても、作り手の人格は受け入れられるからブランド価値は落ちることはありません。むしろこちらの協力者となり口コミを広げてくれるかもしれないでしょう。明確なビジョンとミッションを持ち、それを伝えていくことがブランド構築には重要なのです。
より価値の高い個人ブランドを構築するには過去に輝かしい実績があることも望まれます。自分で売り手を評価できないうちはお客は「第一印象であなたに対してどのようなイメージを抱くか」と「他人からどのように評価されるか」でしか判断できないからです。お客から初回購入してもらうためには何よりもまず「信頼の構築」が必要です。品質の良し悪しは、売り手がどんなにすすめようが実際に買って自分が使ってみなくては本当のところはわかりません。
品質が「良さそうかどうか」「失敗のリスクは少なそうかどうか」を判断するには、「他人からの評価」のほかには、購入する前の段階で売り手がどんな人物なのか、どんな思いで商売をやっているのか、どんなこだわりがあるのかを見て判断するしかありません。
「この人なら嘘はつかないだろう」「この人は騙さないだろう」「この人は自分の利益ではなく客のことを本当に考えているから自分は損することはないだろう」「これだけのこだわりがあれば必然的に商品の質も良いのではないか?」「過去にこれだけの実績があれば安心だ」と思ってもらうことができれば初回購入に結びつけるためのブランディングは成功したと言えるでしょう。(本当に大事なのは二回目以降リピートしてもらえるか。そのためには初回購入の前段階で持たせた期待を上回る商品・サービスを提供できているかが鍵となります。)
(1-B) 自社内に向けた個人ブランド、トップのカリスマ化。
会社がどういう戦略をとるかは社長の考え方がすべてです。社長の実力が会社の業績のすべてを握っています。社長の実力を高めることは社外だけでなく社内に対する良い影響力を生むことになります。そのために従業員に対しても社長のビジョンやミッションを浸透させ、会社全体のルールを作ることでマネジメントを円滑にすることが可能になります。
ただ、トップがカリスマ化する企業においては社員の依存と没個性を生まれやすいのも事実です。トップのカリスマブランドを構築することはアーリーステージにおいては利益をもたらしますが、一旦トップがカリスマブランドを構築した後は、今度はいかにして社員の「社長への依存」の呪縛をいかに解き放っていくかを意識していくことが課題となります。
社長のカリスマブランドに依存し続ける企業はそれが原因で中長期的には利益を損なっていく危険性があります。(カリスマ化することでマネジメントは楽になるかもしれませんが、そのまま社員を依存させ続けていては社員の成長、はたまた会社全体の発展は無いと考えておくべきでしょう)
トップが一貫性を持った正しい価値判断基準を持った上でカリスマ化し、それを従業員が納得いくように「行動に対する意味付け」をすれば社員はトップに依存することなく自分の意志で正しい価値判断基準で行動することができます。「あーしろこーしろ」と指示しても「なぜそうしなければならないのか?」が理解されなければその場限りの指導で終わってしまいます。
逆に言えば、「なぜ?」という価値判断基準を一度理解すれば、その社員はその後自分の頭で考え正しい行動をとることができるということです。それができない一番の原因は、トップ自身が「なぜ」そうしなくてはならないのかを明確に理解していなかったり、方針自体がころころと変わってしまうことが原因であると言えるでしょう。
あなたの会社では「女心と秋の空、そして社長の頭の中」と言われていないでしょうか?勉強熱心で活発な社長にこのようなタイプの人が存在するが、一貫性を持った行動を取ることがどれだけ大事なのかをまず理解することが必要だと思います。それまで曖昧だったビジョンとミッションを一度明確に定め、それに合った一貫した行動・商品を社内外に展開していく・・・本当のブランド作りはそこから始まるのです。